SEKIROプレイレポ④~ゆめ、まぼろしのごとくなり~
わたしの尊愛している小島秀夫監督は、「今のゲームをプレイするということは、その人の人生を40時間、60時間と浪費する事になる。だから、なにかその人のためになるものを練りこまないといけない」という考えを持っているようだ。最高だよなぁ。だからメタルギアは最高のゲームだ。
自分の二次創作だって、時間を拝借して読んでもらえるわけだし、場合によっては何時間もつきあわせてしまう。読んでくれるってほんとにすごいことで、ありがたいことだというのを噛みしめてる…。だからこそなにか読んだ人のためになるものを……練りこみたい……。(願望)
さてはて学ぶことが多いゲームは、良いゲーム。
なので、SEKIROも最高のゲームだ。
狼が斬りこむと、お蝶は舞う。お蝶が蹴りをいれるのを、狼が弾く。黙々と、しかし激しい競り合いとともに火花が散る。
舞うように。
ひらひらと野に遊ぶ蝶の如く、互いの命を白刃のもとへと晒す。
散るように。
燃え盛る業火の勢いに負けず劣らす、互いの眼は白熱していった。
刃にのった感情には、敵も味方も、義理も人情もない。ただ、主命だけがあった。だからこの師弟は戦う運命にある。
跳躍。細い糸の上に乗ったお蝶を目掛けて狼の手裏剣が放たれる。下方からの攻撃に反応が遅れる。お蝶の血を宙へ描いたそれは足を掠め天井へ突き刺さる。隙をみつけた狼の刀がお蝶の胸に吸い込まれていく。
「うっ」
「ぐぅっ」
同時に、刃が、互いの胸を貫く。
狼の意識が遠くなる。その度に、狼の中では主の声が木霊し、反響し、激痛に襲われる。致命傷を負った身体が、ふたたび命を得て動きだした。
奇跡を生みだし、歪みを振りまく呪い。竜胤の力は理を簡単に捻じ曲げ、狼の命を再びこの世へ引きずり出す。
そしてお蝶の身体もまた、傷口からあっという間に溶け出した。得意の幻術だ。かつての師が、まぼろしお蝶と呼ばれる所以。
「ククク…やるじゃないか、せがれ殿」
狼は、その声色に不思議な懐かしさを覚えた。忍びの技は、戦いの中でのみ育まれる。狼にとってお蝶はやはり師であるのだと、腑に落ちてしまう。
迷いを振り払うように狼は刀を構える。迷えば死ぬ。 だからこそ、無理やりにでも斬らねばならぬ。命を賭して守らねばいけないものは、その絆ではないのだから。
まぼろしお蝶、もう何回死んだかわからないのですが、やっと倒せました………!!!
「師と言うが、手取り教えるわけも無し
忍びの技は、戦いの中でのみ育まれる」
この戦いの残滓の説明、いっこ前の鬼形部と並んでほんとーーーーに秀逸。最高。実際にお蝶はSEKIROプレイヤーの半分が倒せないほどの序盤のボスで、何度も子犬扱いされた狼がたくさんいたはずです。わたしにとっては、お蝶はほんとうにSEKIROの世界を生き抜くための「師匠」でした。
忍殺時、「お蝶殿、御免……!」の狼の言葉に、「腕を、あげたね、狼……」と呟き、お蝶は崩れ落ちます。
狼が忍殺時に「御免」というのは、恐らく楔丸テキストの「忍びは人を殺すのが定めなれど、一握の慈悲だけは、捨ててはならぬ……」の慈悲部分だろうし、お蝶はずっと「そなた」「せがれ殿」と呼んでいたのに、最期の最期で「狼」と名を呼び成長を認める……アツい、なんて熱いんだSEKIRO。好きになっちゃう。