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愛の♡フラワーブライダル 感想

愛の♡フラワーブライダル

大切な友達のカップルのために、結婚パーティで盛り上がるパフォーマンスをしたいと考える八神創真。

大切な『二人の結婚』を、最高のパフォーマンンスでお祝いするにはどうすればいいだろう?

「愛。愛の祝福……」

創真は考える。出会いのきっかけでもある、二人がよく纏っていた情熱の愛の色。その色が導くように、とある一人の姿が脳裏に浮かびあがる。

前髪の影から覗く、情熱を秘めた印象的な赤い瞳と、相手を想う心に溢れた細やかな気遣い。

「……ぴったりの人がいるじゃないか♡」

愛のキューピッドに相応しい白羽の矢がたったのは、まさかの霧山おぼろだった……!!

 

☆「隣人愛」と「献身」

八神創真、のっけから完全におぼろに目をつけててめちゃくちゃ笑ってしまった。このミュージカルを書いたのって創真なのかなぁ? 花嫁花婿はいいとしてねぇ、なぜ猛牛を登場させたんだ?!

ダンキラにおいて愛にまつわるイベントの名を冠してるのは他にバレンタインイベのおぼろ、という先駆者のありがたき意見を踏まえるとブライダルの人選、もとい創真の慧眼さすがなイベントだったな。だってギンコさんに根回ししたりとガチすぎる。マリンイベでもみせた、リクエストする食材を賭けて「おぼろとケンカするつもりだったんだ」の創真くんの、意外と強気な一面めちゃくちゃ好き。

 

愛。不定形で目に見えないものだからこそ、人々はその言葉にさまざまな気持ちを投影する。情熱。劣情。慈しみ。憎悪。永遠。刹那。他者に与える幸せの象徴。自己を犠牲にする悲しみのイコン。世界でいちばんシノニムな言葉と、アントニムな意味を内包する単語。ダンキラの中によくでてくる愛という言葉のなかに、どのような意味が色濃くでているのか、……ちょっと興味あるな!

創真の見返りを求めない隣人愛と、『みんなに尽くすひたむきさ』を持つ献身的なおぼろ。アガペーめいた要素なのか?愛は受け取るものではなく与えるものだと聖書はときますが、その言葉の近いところにいるのはこの二人……だったのかも?(わからん)

あとこの栽培組、の創真の元ネタがソーマだとすると、(シアベルの名前のくくりが酒関係だとどっかでみたことがある気がする……けど出てこない……)創真も植物と月の要素を持っているんですよね。まぁこれは偶然か。

 

☆9章→バレンタイン→ブライダルのおぼろの変化

9章(またこの話をする)で、まひるや望の言葉(おもえばこの二人って愛されたいという気持ちを根底に持ってたり自分を変えたりしてきた人たちだよな……言い換えれば他者から向けられる感情を人一倍意識し、俯瞰して客観的に自分を演出する能力を持ってる人たちともいう)の言葉を受けて、「注目されるのが嫌だっていう自分のことしか考えてなかった」から「みんなに応えたい。みんなから向けられる視線を怖いと思いたくない」という自分の意思を持ったおぼろ。

そんなおぼろがバレンタインイベで(お互いの想いを伝えあうってこんなに素敵なことなんだな……)とひっそりおもうシーンがあるんですけど、人の想いはただ一方的なものではなく相互的なものでもあると意識するところがほんっっとに好きでたまらない。3章でずっと源光国のようなヒーロー像に憧れていたからこそ一方的だった熱烈な気持ちを、影のヒーローBTとして活動しはじめて他者から受け取る体験をする。「透明な俺/大多数の一人」からの価値観の脱却が起こって、「ヒーロー」としての賞賛を受け取る側になった。だからこそおぼろは憧れる側の気持ちも、憧れられる気持ちもわかるようになったんですよね。霧山おぼろにコメントをくれる人たちは、霧山おぼろがヒーローに憧れる気持ちとおなじ気持ちでその言葉を送ってくれることを知った。自分のダンキラが誰かに元気を与えていることを体感としてはじめて理解した。それが9章の「俺のダンキラをもっと見たいとおもってくれているのを知った!」に繋がるんですよ!エモ〜〜〜!!

7章で光国に頼りっぱなしだったことを見つめなおして、『自分の意志で、自分の行動で、俺も自分の存在価値を示したい』と自分の道を示したおぼろが、ブライダルイベでは(こんな風に誰かを笑顔にすることができたら……)と、めちゃくちゃ他者に対して自主的かつ積極的な姿勢を見せるの、連続的な変化が感じられてこの一連のイベントが懇切丁寧につくられているってことがわかる……!なんて最高なんだ!ありがとう!!

まぁ霧山おぼろの女装で全部持っていかれたんやけどな~~?!?!なっ!ダンキラくん!!

 

ここまで書いたけど9章とバレイベってどっちが先だったっけごめんほんとダメなオタクでごめん。

 →2月バレイベ、3月9章でしたね…!!ありがとうございます!!

 

あとのブライダルイベ整理するためにおぼれーと一周したけど冒頭しょっぱなから「世界中からチョコが届くなんて光国がすごく喜びそうだ」「ゆかり君もチョコのイメージソングをつくるんだって張り切ってた」ってチームメイトの名前をだすところあまりに安定のさんせかすぎて笑ってしまったおぼろのそういうところが好きだ。なんというか、自然と自分ではなく他人がどうおもうかが先の思考回路になるんだろうな。

あぁおぼれーとでは零士が眼鏡を外して「身に着けるものひとつで周囲の反応が変わるだなんて不思議」でブラックテールのマスクについて考えたり、caunt4の「みんなの期待に潰されそうになるのは考えもの」とか、ちょっと掘り下げたいところはあるんだよな……!あとこういったプロジェクトにはじめて『リーダー』として参加して、7年間ずっとリーダーとして三千世界を引っ張ってきた幼馴染と似たような経験をしたりだとか……おぼれーと、噛めば噛むほどたまらんスルメイベント。

 

・創真のレストランの名前が「秘密」という意味をもってるの、マジマジの八神創真って感じ。

・どうでもいいけどおぼれーとcount6の「思いもよらない衣装を着ることになったらきっと俺も驚いて……いや俺の天使姿に需要ないけど……」のフラグをブライダルイベでさらっと回収してませんか?!?!

・ゆかり君がうっとりとするドイツから取り寄せたピアノ、ベヒシュタインと紅鶴を地味にかけてベニシュタインにしてるの強引すぎてツボってしまった。

・要所要所で蓮太郎がコーチの代わりにめちゃくちゃツッコんでくれるのありがたすぎるなこのイベ。だれかゆかり君の源覚心流・神速早着替え術にツッコんで。

 

 

久々のSLシリーズは道場の幼馴染×愛の♡フラワーブライダル、です。

(ブライダルイベに光国は登場してないけど道幼で書きたかった……。例にもれず10000000%の幻覚妄想です)

 

薄らいでいく夜の気配を肌身に感じながら、おぼろは山の中で焦りを深めていた。花嫁の為に赤い花で編む冠はまだ完成すらしておらず、たった2本しか見つかっていなかった。

 あぁ……最近いいことが起こりすぎたんだ。そんなにうまくいくわけがない……。そう、口に出してしまいそうなところをぐっと飲み込む。「ひとりでなんとかしてみせる」と創真と約束した。その誓いを守りたかった。そしてなにより、おぼろ自身が二人の門出を祝いたかった。

「諦めるな……」

言葉は力を持つ。その不屈の精神は幼馴染の口癖だった。

「諦めるな……!」

 薄暗闇のなか、赤い花を探すため、深みの中へ分け入ってゆく。だが……。

 「っ、うわぁあっ?!」

突如、地面が消えた感覚がした。悲鳴とともにおぼろの意識にあがったのは、手に抱えた花の存在だった。だからほんの少し、反応が遅れた。心臓が底抜ける様な感覚。手を伸ばして無意識に指先に振れたものを掴む。地面から出っ張っている硬い岩は、いくらかおぼろの手を傷つけた。

「あ……危な……」

落下が止まる。花の安否を確かめほっとしたおぼろは、指先に力を込めてそう呟いた。

右手の指の第二関節のわずかな先。それだけがおぼろの命綱だった。足の裏側にどれだけの虚無が広がっているのか、確認する余裕はなかった。

(……どうする?)

心臓が鼓動するたびに、身体を緊張が取り巻いていく。花を手放して両手で這い上がればこの身は助かるだろうが、おぼろの中にその選択肢はない。 

 (ひとりで……なんとかしないと)

ひとりでなにかをやり遂げる、ということから、自分はなんとなく逃げてきたようにおもう。武術やパルクールとはまた別だ。おぼろは積極的に大会に参加したり同士とも交わることもせず、ただひとりで黙々とやっているだけだった。それで十分だった。結果を求めなければ責任も発生しない。仮にもし大会に出たとしても、結果が伴わなければ自分はやっぱり価値がないのだと自己嫌悪して苦しむだろうとなんとなく予想していたし、大会のヒリヒリとした空気はおぼろをただ疲弊させるだけのものだった。

だけど紅鶴の生活がおぼろを変えた。自分の頭を使って考える。自分の行動で結果を出す。『自分の意志で、自分の行動で、俺も自分の存在価値を示したい』己の口から出てきた言葉に、おぼろ自身がなにより気持ちの変化を感じていた。この言葉を、自分が裏切るわけにはいかなかった。

「ぅう……っ!」

だが、時間は容赦なくおぼろの意思を削り取っていく。全体重がかかっている指先が、限界を迎えて震えだした。花を持つ手にも力がこもって、細い茎がしなびてゆく。

(諦めたくない……)

そう思った瞬間。

「……おぼろ、いるのか!?」

聞き覚えのある声が腹の底へ響く。耳を疑ったが、反射的に返事をしていた。

「みっ……光国!」

「そこか! 待ってろ!」

ガサガサと草をかき分ける音が近づいてきて、おぼろは「崖になってる……! 気をつけて……!」と忠告をする。やがておぼろの居場所を探し当てた光国は、「もう大丈夫だ!」と助けるために手を伸ばした。

その伸ばされた手を見た刹那、おぼろは迷った。そして花を持った左手をぐっと伸ばす。その動きでずる、とおぼろの右手が滑った。一刻の猶予もない状態だった。

「光国……花を……!」

光国の表情が固まる。光国の目には、おぼろを飲み込まんとしている奈落の底が見えている。おぼろのことも、おぼろの大事にしているものも、両方守るための即断即決を迫られていた。迷いなく光国は叫ぶ。

「咥えろ!」

はっ、とおぼろの目が見開かれ、二本のか細い花の茎を咥えた。自由になった手をめいいっぱい伸ばして、光国の手を掴む。ぐん、と身体が持ち上がる。崖の上まで引っ張り上げられたおぼろは、前にもこんなことがあったな、と思いながら地面にへたり込んだ。

「おぼろ、大丈夫か?」

地面の感触を確かめるように、おぼろは両手をついたままゆっくりと頷き「ありがとう……」と感謝を告げる。

「光国……どうしてここに?」

「それは俺の台詞だ。俺はいつもの早朝の走り込みだが……おぼろは今日、結婚パーティではなかったのか? ……その花が必要なのか?」

「これは……花嫁さんが被る花冠を編むために探しているんだ。けれどまだ2本しか見つからなくて……」

光国は「ん?」という顔をした。

「……そこの崖下にあるのは似てないか?」

「えっ……?!」

おぼろは慌てて落ちかけた崖の上から覗き込む。少し離れた岩棚に、赤い花が密集して咲いてあるのが見えた。

「あ、あれ……そう、かも……!!」

がばっと立ち上がり、おぼろはすぐさま距離感を目で測りはじめる。「あそこで蹴って……」とぶつぶつ呟きながら靴を脱ぎ、駆けだすために姿勢を低くする。光国はそんなおぼろの豪胆さにいつも度胆を抜かれてしまう。

「おぼろ!」

「だ、大丈夫だよ。これくらいなら……」

そう言い残すや否や、おぼろの身体が浮いて、視界から消える。おもわず息を吐くのも忘れてしまうほど鮮やかな着地をしたおぼろは、咲いてある赤い花を確認して「光国ー! あってる!!」と声をあげ笑顔で手を振った。「そうか! よかったなー!」と光国も返す。しばらくして花冠を手早く編んだおぼろは、「俺、こっちからいくよ!」と、別の細い岨を渡って光国の立っている山道へ戻ってきた。

「ほんとにありがとう、光国。これで花嫁さんと花婿さんに喜んでもらえるかもしれない……」

「お前が二人の幸せを想って編んだ花冠だ。自信をもって届けてこい!」

ばしりと背中を叩かれ、おぼろは勢いよく「う、うん! じゃあ、そろそろいくね……!」と走り出す。こうやっておぼろの背中を見届けるのを、なんだか光国は不思議に感じ、その背中の大きさに誇らしい気持ちになった。

山の中で人目に触れずに咲いていた花は、おぼろの手で祝福の形へと編まれ、たくさんの人々に愛と感謝を届けるのだろう。そんな幸せの象徴である花を人々の輪のなかへ連れてきたのは、間違いなくおぼろの細やかな心遣いだ。おぼろが自分で考えて出した過程は、またひとつおぼろをよい結果へと導くだろう。

「おぼろ。お前は自由に、咲いてゆけよ」

光国は万感の思いを込めて呟く。風に乗って咲く花のように、世界中にお前の存在が届いてゆけ。朝日のなかを駆けてゆくおぼろの背中を、光国はずっと見守り続けていた。

 

 

201120